(財)関西グリーン研究所山田明先生のお話

20関西グリーン研究所は、昭和35年に関西ゴルフ連盟の一機構として活動をスタートされました。その目的は、芝地を中心とする緑化促進、土壌・病理・薬剤等の調査、研究をし、その理論と技術を広く一般の緑化環境に貢献することと聞いています。
日本においては欧米諸国と比べて芝地の普及は格段に低く、公園や一般家庭においては歴然たるものがあります。というのも欧米各国には国立、或いは民間に加えて大学にも専門のコースが確立されているのに対して、日本では特定の学者による研究がなされているに過ぎません。このような環境の中で広大な芝地面積を持つゴルフ関係者が、芝地管理の研究所を設立するといったことは、自然の流れだったのではないでしょうか。
これからの緑化環境についての対策等をお聞きしたいと思います。

 


── 日本には芝に関する専門的な研究所はなかなかないですよね。

山田 「そうですね。日本特有の芝もありますし、病気等はやはり研究していかなければなりません。専門機構は必要ですね。」

── 今では、ゴルフ場にはなくてはならない存在ですからね。

山田 「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいですね。(笑)」

── 活動内容はどういったことなんでしょうか?

山田 「芝地に関する研究はもちろんのこと、その研究発表もしています。昭和36年に第一回の研究会大会を開催してから、以後毎年2回、定期的に開いています。それと連盟加盟クラブをはじめ、関連業界の要請による各分野の委託調査、コース改善、現地指導等の活動もしています。」

── キーパーさんはそれを参考にされて、日々の管理に精をだされているわけですね。

山田 「毎年といいますか、新しい病害虫・雑草問題というのがでてきてますからね。それの対処法は日々のコース管理からは難しいですよ。」

── 妨害もそうでしょうが、ゴルフ業界での緑化廃棄物の対策については?

山田 「それは、ゴルフ業界のこれからの課題ですね。焼却できないですしね。産廃業社に頼むとしたら、かなりのコストがかかってきます。ですから、研究所としては、堆肥化を考えております。」

── 堆肥化して有効利用しようというわけですね。

山田 「そうですね。長期的にできればいいと思います。ただ、日本のゴルフ場の場合、排水性や雑草の問題がありまして。」

── といわれますと?

山田 「例えば、過剰に撒布された時の透水性低下や、芝に雑草の種などが残っていた場合、堆肥化して撒布してもまた、雑草が生えてくる可能性はありますから。これからの研究材料ですよ。」

── 最近、微生物を利用されるところもありますが、グリーン研究所でも芝に発生する病気をなおすための微生物を開発されていますか?

山田 「はい。しかし、微生物の効果をまだはっきりとつかめていない状況ではあります。芝生を取り巻く環境条件が異なるので、100%その現場で効果を出すには非常に難しいです。現時点ではゴルフ場に満足して頂くのには科学資材の方が早く、シャープに効きますね。」

── それでは、減農薬の形は可能なんでしょうか?減農薬することで、ゴルフ場のコストダウンにもつながると思うのですが。

山田 「そうですね。減農薬は可能ですよ。そういった努力もしていますしね。最近は私の方にも校庭緑化の声も聞こえてきますし、減農薬はまだまだ必要ですね。」

── 先生のところへは学校から校庭の芝生化についての相談がおありになるのですか?

山田 「直接学校からはまだありませんが、以前、保育士の方が芝を見たいと来られまして、圃場を見てもらいました。でも、整備されている芝生より、雑草がまざっている芝地に興味を示していました。芝に対して要求していることが人によって違うのだなと感じましたね。(笑)」

── その方は校庭緑化に興味があるのかも知れませんね。

山田 「グリーン研究所はゴルフ場でなりたっていますが、私個人的には興味はありますね。」

── では、先生に個人的にお聞きします(笑)。現在、校庭緑化が進んでおりますが、爆発的に普及しないのは芝生を維持する、すなわちメンテナンスに問題があると思いますが・・・。

山田 「そうですね。校庭緑化はいいことだと誰もが思います。問題はメンテナンスですね。素人でも最初は出来ますが、続きません。というのも、雑草取りとかもありますし、機械作業等もありますから。」

── PTAの方から、芝生のメンテナンスは素人だけでできないものかとよく質問されるのですが、私は必ず、素人だけではできません、とお話をしているのです。

山田 「そうですね。学校側が、どの程度のコンディションを要求するかで変わってきますが。それでも専門家は必要でしょうね。」

── グリーン研究所に、もし相談があったりすれば、どのように対処していかれるのでしょうか。

山田 「実際は、会員外の方との接触はありませんが、アドバイスはできます。でも、現場で作業として、芝生を刈らなければいけない状態を見ても、実際は出来ません。労力的な問題もそうでしょうが、機械がなかったりもしますから。こういったことは初めから計画的にしなければいけません。」

── 日本では芝の専門といえば、やはりゴルフ場ということになってきますよね。

山田 「そうですね。コースの管理者がボランティア的にできればいいのですが、それには経営者側の理解が必要ですね。」

── あとコスト的な問題があります。校庭を芝生化するのに、ゴルフ場と同じコストはかけられませんから。

山田 「張り芝でしたら、コストはかかってきますよね。それと、選ぶ芝生の種類によってもメンテナンス方法が違うので、コストも変わってきます。それでも最終的にはメンテの問題となってきます。」

── 行き着くところは、やはりメンテナンスですね。

山田 「そうです。素人だけでするより、専門家がいる方がかえってコストが軽減されることがあります。」

── 素人では限界があり、専門家でないとメンテナンスは厳しいという事がよくわかりました。本日はお忙しい中、有難う御座いました。


21今も刈り芝等の産廃物の処理が大きな問題となっています。でも、これを堆肥化させ、その堆肥を利用していく。リサイクルするということを、関西グリーン研究所は考えておられました。こうすることによってコスト削減と環境問題解決につながっていくのではないでしょうか。
校庭緑化については、山田先生個人のお考えでしたが非常に参考になりました。山田先生のアドバイスを参考にして、校庭緑化を身近なものとして地域に根付くことにより、欧米諸国に負けない緑の絨毯をあらゆるシーンで目にすることができれば、未来の地球環境に大いに役立つのではないでしょうか。
日本での数少ない先駆け研究機関として、関西グリーン研究所には私たちの業界だけではなく、校庭緑化も含め、緑化推進されている様々な分野での活躍が期待されます。


(このインタビューは月刊ゴルフマネジメント2003年8月号に掲載致しました。)