初田拡撒機(株)初田稔社長のお話

ハツタさんは昭和36年に防除機研究所として創業されました。そして41年に現在の社名となり、平成15年に初田稔氏が代表取締役に就任されました。初田拡撒機の成り立ちや歴史、今後のビジョンをお聞きしたいと思います。


 

20── 初田拡撒機の歴史を教えて下さい。

初田 「創業してから今年で44年目になります。昭和36年に農業用の機械を製造販売しております初田工業の一部分として防除機研究所という名前で独立しました。何をやりだしたかと言いますと、当時は農業用の大型防除機を製造する会社として立ち上がりました。その後にゴルフ場にも応用した機械が作れるんじゃないかということで、タンク車などを製造しはじめました。ちょうどこのころに社名を初田拡撒機と変えました。昭和41年ですね。」

── 歴史がありますね。

初田 「そうですね。初田という会社は今年で101年目なんです。去年の12月1日で100周年をむかえました。私の曽祖父にあたる初田利兵衛が高木文平さんという方が発明された二重瓶消火器の専売特許権を譲り受けて、明治35年に京都で二重瓶消火器株式会社を創立したのが始まりです。」

── 老舗ですね。ところでその高木文平さんというお方はどのような方だったんですか?

初田 「京都の政界におられた方で知事か市長かをされていた方と聞いております。それで、京都の発展のために何かできないかということで、琵琶湖疎水をやられたんです。最初は疎水をつくって簡単な水車で発電しようと考えられてたみたいだったんですが、アメリカで水力発電を学んでこられたらしく、その疎水を利用して水力発電をつくられたということです。あっ、それと確か明治35年は初めて電車が走った年なんですよ。」

── チンチン電車ですね。

初田 「それとつくられた方でもあるんですよ。その方が消火器というものを考案されたのです。」

── なるほど。それが先ほどお話にあった二重瓶消火器ですね。

初田 「そうです。20年か30年前までは各地の小学校とかにはありましたけど。」

── そうですよね。年齢がわかってしまいますが、私も見た記憶があります(笑)。

初田 「昔は京都の神社とか仏閣で冬場によく火事とかがあって、それでよく売れたんですけどね。夏場は幸いな事に火事があまりないので消火器の出番がすくなかったんです。」

── 昔のことですから暖をとるのに冬場は火を使いますものね。そういう意味では季節の商品になるのでしょうね。

初田 「そうなんですよ。それで夏場はゆとりがあるので何をやりだしたかというと農業用機械を作りだしました。」

── 農業用機械で思い出したのですが、アメリカも日本もゴルフ場の緑化機械のメーカーさんはほとんどのところが農機と関連がありますね。ハツタさんも現在は緑化機械の製造に携わっておられますよね。ところでハツタさんが製造されているコアスイーパーは世界では例を見ない画期的な商品ですね。

初田 「スイーパーとしてはそうなりますかね。アメリカではコアハーベスターというのがありますが、特にグリーンの上にのせてコアを吸い取るというのはアメリカやヨーロッパにはないかと思います。」

── 以前はグリーン上に機械をのせることを嫌がるキーパーさんも多かったのですが・・・。

初田 「そうですね、スイーパーでいえば、普通のエアタイヤでしたらコアを踏んだ時に崩れてしまいますよね。でもうちの場合は特殊ウレタンタイヤを使ってますんで、踏圧も低いですし、コアの形も崩しません。ですから回収にも問題はありませんし、当然グリーンにも問題がないんです。重宝して頂いております。」

── コアスイーパーがでてきてからエアレーションの作業するのが少しは楽になられたのではないでしょうか?

初田 「今までは手作業でやっていたところが多かったですからね。そういう意味では管理作業の方には喜んで頂いているのではないでしょうか。作業時間も短縮できますしね。」

── 現在は東南アジアの方でもコアスイーパーを使って作業していると聞いたのですが。

初田 「そうですね。ゴルフ文化は進んできてますね。東南アジアの中でも韓国は更新作業がかなり進んできています。おかげ様でコアスイーパーも出ていますから(笑)。」

── そうみたいですね。日本でも最近になって芝生の更新作業が重視されていますね。それが長い目でみれば、環境保全に繋がっていきますしね。ところで社長は環境保全についてはどのようにお考えでしょうか?

27初田 「韓国も含め、日本がしている環境保全のレベルに比べたら東南アジアはまだまだじゃないでしょうか。特に韓国の場合、ゴルフ場はソウル近辺に多いですから、日本と同様に環境についても考えていかなければいけないでしょうね。」

── アメリカの方では早くから環境を考えての低圧散布が当たり前ですが、日本でも近年の主流派低圧散布になってきていますね。ところでハツタさんのところにも良い製品がありましたね。

初田 「私たちはスプレーヤーといいますかタンク者を創業時から製造していましたからね。ゴルフ場にも環境を視野に入れた商品が必要だろうと思ってました。海外ではジョンディアさんやトロさん、クッシュマンさんが同じように低圧散布のスプレーヤーを作っていますが、やはり国内でも時代は低圧、小水量の散布が求められてきてますね。日本のコースを考えた上でどういうものがいいのかということでうちでも低圧散布のスプレーヤーを作らさせて頂いております。」

── コンセプトはどういったところでしょうか?

初田 「向こうの機械と比べるとうちのポンプの圧は少し高いです。というのも後ろに巻き取り機がついているのですが、コースによっては高圧で遠くへ飛ばすような作業とか水量も多い作業とかがありますからね。私どもではその両方、高圧も低圧も兼ね備えた機械が必要だと思います。」

── ハツタさんのスプレーヤーがあれば両方の作業が出来ると言うことですか?

初田 「はい。ただし従来のトラックに搭載しているようなプランジャーポンプのように松喰いの作業までは厳しいですが、うちのスプレーヤーではある程度の作業はカバー出来ますね。」

── 操作性が良いのですね。今後の方針としてはどうなんでしょうか?

初田 「価格に見合った省力化が課題ですね。機械のテストをやっていく中でお客様には喜んで頂いてはもらってます。でも初めの考えではあれもこれもと詰め込んだんですよ。というのもコンセプトを高いところにもっていったんです。ですからもう少し価格も考慮してシンプルにいこうかと。」

── シンプルにですか?

初田 「それでお客様に喜んで頂いて、拡販して量的にだしていきたいと思ってます。年々売れてはいますけどね(笑)。」

── シンプルにされても他の機械との差別化は必要ですね。特に最近では低圧散布の流れになっていますから、これからはそういった商品開発も必要になってきますね。本日はお忙しい中、有難う御座いました。


ゴルフ場界でも老舗である初田拡撒機(株)。今現在も環境に配慮された商品開発を推し進められています。差別化の商品開発というのは機械屋さんにとって永遠のテーマといっても過言ではありません。時代の流れを汲み、その時代に沿った商品作りが大切になってきます。環境問題も同じで、未来の為に今やらねばならない事がたくさんあります。そういった中、私たちは時代を先取りして、様々な環境問題に配慮した製品作りにも取り組んでいかなければいけないと実感いたしました。


(このインタビューは月刊ゴルフマネジメント2004年9月号に掲載致しました。)